小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
これも・・だ。
不安そうにしている子どもの手をそっと握るのも、普段からやっていることだった。

「私・・いつの間にか先生の患者さんになってしまったみたいですね」

「えっ」

「でも・・。私は西島先生が小児科の先生だって知ってるからいいですけど、知らない女性だったら絶対に勘違いします・・」

彼女は、俺の手が重なった部分から、すっと自分の手を引き抜く。
目元を見ると、もう涙は止まっていた。

「さ、食べましょ。この翡翠(ひすい)餃子、皮の色もすごく綺麗」

雰囲気を変えようと次々に点心を口に運ぶ彼女を見て、俺は一度手にした箸を置いた。

「勘違い・・って、どんな勘違いだろう。もしかしたら僕も今、少し勘違いしている気がして」

そう言った俺に、彼女も食べる手を止める。
ふぅ、と小さく息を吐き、ジャスミンティーをひと口飲んでから言った。

「先生が・・・・好意を持って接してくれてるかもしれない・・っていう、勘違いです」

「好意・・。そう・・だよね、やっぱりそうだよな・・」

自分でも良く分かっていなかった。
無意識に彼女に伸ばした手が、普段の医師としての俺の気持ちからくるものなのか、そうじゃないのかを。

でも無意識に出るのは、普段そうしているからだと考えるのが自然だけれど、やっぱり彼女に対してはそうじゃなかった。

こんなふうに自分から、自然に触れた女性は初めてだから。

< 20 / 107 >

この作品をシェア

pagetop