小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「・・私」

「うん」

「・・私・・も」

「うん」

「・・西島先生を、好きに・・なりました」


彼女が俺の腕の中で顔を上げる。

これはマズイだろう・・。
キスしたい衝動をクールダウンさせるために、俺は彼女の視線から外れたくて横を向いた。

「・・先生?」

彼女と視線を合わせたら、止められない。

それなのに。
背伸びした彼女の唇が、一瞬だけ俺の唇の横に触れる。
横を向いていなければ、そこは唇の位置だ。

「私は・・したい・・です」

そう言った彼女に、俺は先を越されたと思いつつも、わざと意地悪っぽく伝えた。

「いくら通りに面してないからって、マンションの前でキスして平気?」

「あ・・」

「平嶋さんが噂の的になったら困るかなと思って、我慢してたのに」

「あー・・」


困った顔も可愛い。
俺は思わず、彼女を包んでいる腕に力を込めた。

「もう少し、一緒にいてもいい? さすがにこのタイミングで、また今度・・っていうのは寂しいなと思って」 

想いが通じたのが嬉しくて、離れがたかった。
彼女もそう思ってくれたのか、『私も』とつぶやいた。

「んーと、どうしたらいいかな・・。連れて帰りたいところだけど、それはそれで平嶋さんが帰る時に困るだろうし。かといって・・」

そんな俺を見て、彼女がクスクスと笑った。

「良かったら、このままうちに来ませんか? 何も無いですけど、お茶くらいなら」

お茶くらい・・じゃ済まないよな。
葛藤しつつ、一緒に彼女の部屋に向かった。

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