小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「・・うっ・・うう・・」

小さな肩が震えて、俺のスクラブに涙のシミがいくつか広がる。

良かった・・。
我慢していた感情が、少しずつ涙で洗い流されていく。

「みんなには内緒にしような。でもその代わり、もう少しだけ身体を見せてもらってもいい?」

こくんと男の子は頷いた。
俺は、全身にゆっくりと触れていく。痛がる箇所も、身体がこわばる様子も無かった。

「大丈夫だね。頭はガンガンしない?」

「うん、いたくない」

「そっか。もうちょっと僕と一緒にいる? それとも、看護師のおねえさんと一緒でも平気かな?」

「・・おねえさんでも、へーき。せんせい、ありがとう」

その会話に気づいた看護師が俺たちのもとへやってきて、男の子をナースステーションに連れて行く。
ちゃんと会話もできているようだし、ひと安心だ。


「さすがだな。やっぱり祐一郎を呼んで良かったよ」

電子カルテに男の子の状態を入力していると、処置を終えた大翔に声をかけられた。

「お疲れさま。大変だったろ」

「ああ、ちょっと休憩」

近くにあった椅子に座り、大翔は目を閉じる。
搬送が多かったのだろうか・・かなり疲れているように見えた。

「コーヒー買ってくるよ。大翔はブラックでいいか?」

「・・俺もコンビニ行く。このまま座ってたら寝ちゃいそうだし」

薄明かりの廊下を通り、病院の外に出た。

大翔は軽食を買い、俺はコーヒーを買って飲みながら戻る。

「なぁ祐一郎」

「んー?」

「茉祐子のこと、どう思う?」

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