小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

「でも、時間に融通が利く私が合わせるのは、別に普通のことだと思うし･･」

素直に喜ばないだろうと考えていた通り、彼女は戸惑った表情をしていた。

できるだけ俺の負担にならないように、といつも気遣ってくれる彼女だから、きっと『買わせてしまった』と申し訳なく思っているんだろう。

「俺はね、茉祐がそんなふうに俺に合わせてくれるのを、特別なことだって思ってるんだ。俺のことを特別な存在だって考えてくれてるからじゃないかなって。違う？」

「････」

「もし普通のことだって言い張るなら、俺が茉祐にとって特別じゃない･･その辺にいる普通のオトコと同じ存在ってことだなー」

それを聞き、諦めの苦笑いを浮かべた彼女を見て、俺は思わず微笑んだ。
彼女の気遣いは、当たり前なんかじゃない。
それを、ちゃんと伝えたかったから。

「良かった。俺、茉祐の特別な存在らしい」

「･･ありがとう。ここでもいつも通り仕事ができるなんて、すごく助かる」

「茉祐が喜んでくれて嬉しいよ」

「あと･･祐一郎は特別な人、だよ。とっても大切な人･･だから」

俺は彼女を抱き締めて、『特別な人』『大切な人』の余韻を感じていた。
口に出して伝えてもらえると、俺も同じように伝えたくなる。

「茉祐、好きだよ」

見上げた彼女の唇を、俺はやわらかく塞いだ。