小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「そうなんだ。苦手な先生だったとか? 困った顔してるから」

「・・・・」

疲れているであろう彼女を問い詰めるのもどうかと思い、気になったもののそこまでにした。

「茉祐、新幹線までまだ少し時間あるから、軽く食べようか。食欲ある?」

「えっ・・。あ、えっと、少しなら」

「じゃあ、あの改札のそばにあるカフェに入ろう。食事もできそうだし、ケーキだけでも大丈夫そうだから」

俺は彼女の手からバッグを奪い、代わりに手をつないだ。
その手は驚くほど冷たくて、よほどさっきの男に会いたくなかったんだろうと考えた。

いったい誰だよ・・。

彼女は、外科と救急医療がメインだったはずだから、その分野の先生だろうか。
見えたのは後ろ姿だけだったけれど、若い医師には見えなかったな。

「ね、祐一郎は何にする?」

「あ・・。そうだな、和風パスタにするよ」

注文したパスタが提供されるまでの間に、ふと大翔が言っていたことが頭をよぎる。
確かあの時・・。

『俺、茉祐子が困ってる時に話聞いてやれなくてさ。それどころか、責めたんだ』

彼女が困っている時に・・と言っていた。
もしかして、さっきの男と何かつながりがあるんだろうか。

何が原因かはともかく、頼んだチーズケーキすら口にしていない彼女が心配だった。

結局その後も、ほとんど会話らしい会話もせずに俺たちは東京に戻り、そのままそれぞれの家に帰った。

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