小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
見た感じ、そこに彼女がいる様子はない。
部屋の中にいるのか、まだ戻ってはいないのか・・。

すると後ろから、『祐一郎?』と呼ぶ声がした。

えっ?

振り返ると、エレベーターから降りてきた彼女が俺に近づいてくる。

どうする・・?
でも・・ふたりには会わせたくない。

俺は無言で彼女の肩を抱き寄せて、エレベーターに逆戻りして下りのボタンを押す。
すぐに扉が開き、俺と彼女を乗せてエレベーターはロビー階に降りた。

「茉祐、いま休憩時間だろ? ロビーの横にあるカフェで食事しないか?」

「うん。でもびっくりした・・。空き時間を聞かれた時は、もしかして電話くれるのかな・・くらいしか考えてなかったから。嬉しい」

「あ・・もしかして、休憩時間に誰かと一緒に食べる約束とかしてた? 俺、急に来ちゃったから」

上で大翔を見かけたこともあり、彼女に尋ねる。
あいつとランチの約束でもしていたのではないか・・と。

「あー・・うん。ハルから話がしたいって連絡あったんだけど、詳しくはまた・・ってそれっきり。だから大丈夫だよ」

そう言って彼女は微笑んだ。
嬉しそう・・だよな?
『嬉しい』って言ってくれたよな。

「茉祐、これ差し入れ。茉祐の好きそうなケーキ買ってきた。後で食べて」

「ありがとう。祐一郎・・なんだか最近・・・・元々優しい男の人だと思ってるけど、なんていうか・・その・・さらに甘くなった気がする・・」

「茉祐は・・甘いの嫌か?」

彼女の頬に手を添え、まっすぐに見つめてそう言うと途端に顔が赤くなった。

< 75 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop