小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
どれくらい時間が経っただろうか。

立ち尽くす俺の横で、彼女もまた、動かずにいた。


でも、先に口を開いたのは彼女だった。



「父よ」



え・・いま・・何て言った?


「神崎先生は、私の父なの」

「・・・・え?」

「事情があって、公にはしていないのだけど」


いや、ちょっと待て。
何が、どうなってる?

神崎先生が、彼女のお父さん・・・・?


俺は混乱して、よろよろと近くのベンチに座り込む。


お父さん?
でも、お父さんだとしたら、今まで聞いてきた話をどう解釈すればいい?


「祐一郎」

「・・・・」

「ハルに、昔の話を聞いたりしたと思うけど、事実は少し違うの」

「え・・?」

「全部話すわ。でも、ここで話すような内容じゃないから、一緒にホテルに戻りましょ」


正直、どうやってホテルまで移動したのか覚えていない。
もちろん彼女と歩いたのだけど、その間、何か話したのか、何も話さなかったのか、記憶が完全に飛んでいた。

それくらい、衝撃的だった。

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