小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「どこから話したらいいかな・・。祐一郎がハルに聞いたと思うことに、補足して正しく伝えればいい?」

俺は頷いた。
聞きたいことはいくつもあったものの、それを口にしてしまったら冷静でいられる自信が無かったから。

「神崎は私の父なんだけれど、ママは、神崎には妊娠も出産も伝えていなかったそうなの。出世の足を引っ張ってはいけない・・って。連絡を取らないうちに、本当に行方が分からなくなってしまったみたいで、だから私もずっと、父の顔も名前も知らなかった」

「うん・・」

「4年前・・・・ママが亡くなる少し前に、ようやく神崎のことを話してくれて。私もその時に、初めていろいろ知った」

そう・・だったんだ。
大翔が言っていた『奥さんを亡くしたばかりの教授』というのは神崎先生のことで、そこにたまたま彼女が仕事で現れたんだろう。

そして、彼女にお母さんの面影を見た神崎先生が、自分の娘と知らずに彼女に好意を持ってしまったということなのか・・?

「私ね、外科研究室の懇親会で、かなり飲んで酔った時に、一度だけ・・」

「茉祐ごめん・・ちょっと待って」

俺は、彼女から視線を外して目を伏せた。
何を言う気だ・・。

『かなり飲んで酔った時に、一度だけ・・』

そこに続く言葉は、おそらくひとつしかない。
表現する言葉がいくつかあるにせよ、意図するところはひとつだ。

でも、親子だろ・・?
受け止められるだろうか・・。

俺は右手で、自分の左腕を抑え込むようにぐっとつかんだ。

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