小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
彼女は、誤解を解くためにも俺にひと通り話したいと言ってくれた。
でも俺は、どうしてもいま話す必要がないことなら、追々話してくれればいいと伝える。

もう心配するようなことが無さそうだったのと、疲れている彼女に無理をさせたくなかったから。


「祐一郎、そろそろ帰ろうか」

「うん・・・・。なぁ茉祐、神崎先生は茉祐のお母さんのところに行ったことあるのか?」

「えっ・・無い・・よ。霊園の場所は教えてもいないし、ふたりで行くのも・・ねぇ」

「だったら、もし茉祐の体調に問題なければ、これから連れて行かないか? 俺、お母さんの車でここに来てるし、今日なら一緒に行けるから」

テーブルの上に置いてあった会議プログラムを見て、終了時刻を確かめる。
終了は18時・・そして、今は17時45分だ。

「茉祐、どうする?」

「・・行く。私なら大丈夫、車で寝ることもできるから」

「よし、急ごう。すぐにチェックアウトして会議場に向かえばなんとか・・」

「うん」

パッキングはほとんど済ませてあり、会議場から持ち帰ったものをバッグに入れる程度で終わった。

ロビー階に降りてチェックアウトを済ませつつ、一時的に荷物を預かってもらう手続きをして、彼女と俺は会議場に走った。

まもなく18時になる。
ふたりは、いったいどの出口から出てくるんだ・・。

「祐一郎、こっち。神崎はこの時間帯コメンテーターだから、その席近くの出口から出てくるはず」

彼女に誘導され、俺たちはその出口の前で神崎先生を待った。

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