小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
辺りはもう暗くなっていたものの、彼女のお母さんのお墓は外灯の真下にあった。

「お父さん、ここ。夜なのに、ママのいるところはやっぱり明るいよね」

「うっ・・うう・・加奈子・・加奈子・・」

神崎先生と彼女をふたりにして、俺と高浜教授は少し離れたところにいた。

「西島、神崎のこといつから知ってたんだ?」

「気配は、なんとなく感じてましたよ。でも、その正体と事実が分かったのはほんの数時間前でした。お母さんのことは、もっと前から知ってましたけど」

「そうか・・。俺は神崎と大学の同期で、あいつの外科に対する勉強量が凄すぎて外科医はやめようと思ったくらいだ。その後の研修で出産に立ち会ったんだが、生まれてきた赤ん坊が必死に生きる姿に感動して・・。俺はそれで小児科を選んだんだ」

ハハハ、と高浜教授は笑う。
そうだったんだ・・高浜教授が、特に新生児の研究に力を入れているのはそういう理由だったのか。

「選ぶ理由はそれぞれだが、みんな何かしらの思い入れがあるもんだよ。機会があったら、なぜ神崎が外科を選んだのかも聞くといい」

「そうですね・・ぜひ伺いたいです」

「あと・・これから話すことは、もしかしたら茉祐子ちゃんも聞かされていないかもしれない。折を見て話してもらって構わないが、ひとまず西島の胸の中に留めてもらえるか?」

「えっ? ・・はい、もちろん」

何だろうか・・彼女も知らない、過去の出来事とは・・。

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