小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「西島は、加奈子さんに持病があったのは知っているか?」

彼女にお母さんの話を聞いたときに言っていた。
『もともと持病があったんだけど、少しずつ悪くなっていって』と。

「はい。具体的に何かは聞いていないですが、持病があるというのは聞きました」

「そうか・・。加奈子さん、心臓が悪かったんだよ。神崎は付き合っていた加奈子さんの病気を知って、その権威がいるアメリカの大学病院に渡ったんだ。なんとかその術式を身に着けるためにね。
でも、その2年の間に加奈子さんの消息が分からなくなってしまった。いま思えば、自分の妊娠や出産が神崎の負担になると考えたんだろうな・・」

「・・そんな」

でも、分からないでもない気がした。
彼女も、どこか似た考えの持ち主だと感じていたから。

だから俺は、彼女と暮らすことを選んだんだ。
近くで、守ってやりたくて。

「神崎は、日本に帰ってきて加奈子さんと同じ症状の患者を何人いや何十人も救ったのに、肝心の加奈子さんが見つからない。
結局、なんとか探し当てたのは5年前だったんだ。30年も掛かってしまったと、本当に悔しそうだった。
加奈子さん、もうすっかり弱ってしまっていてとても手術に耐えられる状態じゃなかった。悲し過ぎるよな・・」

「神崎先生は、その時彼女のお母さんに会ったんですか?」

「いや、直接は会っていない。ただ、その症状の最新の治療方針をアドバイスするために、一度だけ、見えないところで診察に立ち会ったらしい。
その夜、俺のところに来て泥酔していったよ。本当に、見ていられなかったな」

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