小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「西島くん」

墓参りを終え、帰りの車の中で後部座席から神崎先生が俺を呼んだ。

「はい」

「西島くんが・・茉祐子と加奈子を守ってくれていたんだね。もし・・西島くんさえ良ければ、この先もふたりを頼んでもいいだろうか?」

「ちょっ・・お父さん! 何言ってるのよ、そんな・・。私、彼の負担になりたくない・・」

そう言って、彼女は助手席で目を伏せた。
俺は、そんなことはないと伝えたくて、彼女の右手に自分の左手を重ねた。

「おいおい神崎、西島に逆プロポーズか?」

「高浜、俺は明日の夜にアメリカに戻るんだ。だから、ちゃんとしておきたい」

「神崎・・」

「俺は嬉しいんだよ、高浜。だって考えてみろよ・・・・西島くんは俺が最も信頼している高浜の教え子で、茉祐子をとても大事に思ってくれている。
初めて会った時から、彼をいい青年だと感じていたし・・娘を頼みたいと思うのは当然の発想じゃないか?」

後ろで盛り上がっているオジサンふたりはともかく、俺は彼女が気になった。
休憩がてら、夜遅くまでやっているカフェに入り駐車場に車を停める。

飲み物を買ってくると伝え、彼女とふたりで車を降りた。
無言のまま店内に入ると、彼女が後ろから俺の服の裾をつかんだ。

「ごめんなさい・・父が勝手に・・。返事なんてしなくていいから・・」

振り返ると、彼女は今にも涙の粒がこぼれ落ちそうだった。

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