小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
やっぱりそうだ・・。
彼女は、このシチュエーションを笑って受け流せるようなタイプじゃない。

俺はポケットからハンカチを出して、彼女の目元にそっとあてた。
そして彼女を店内のカウンターの椅子に座らせて、俺もその隣に座る。

「茉祐。謝らなくていいし、泣かなくていいんだ。これから先どうするかは、ふたりで話して決めよう。ね?」

こくんと彼女は頷いた。

「うん。じゃあ、俺が考えていることを先に言う。
俺はね、これからも茉祐を守っていきたいとシンプルにそう思ってるんだけど、どうかな?」

「え・・どうかな・・って」

「茉祐は、これからも俺と一緒にいたいと思う? それとも、毎日心配されて・・実のところウザくない?」

少し大げさに聞くと、彼女はプッと吹き出す。
そう、笑ってなきゃ。

『どう?』と聞きつつ、俺は手を繋ぐようにして彼女の手を握った。

「私が・・決める・・の?」

「だってほら・・俺、言ったよね? 茉祐をもっと大事にするから、俺を選んで・・って。俺・・茉祐に、俺がいいって言ってもらえるかなー・・」

俺は、彼女の答えをじっと待った。
もし彼女が、この場面でも『自分なんて』という意味合いの言葉を口にしたとしたら、さすがに自信を失くすかもしれない。

ずっと・・大切にしてきたつもりだけれど、ちゃんとそれが届いていたのか、自分が試されているように思えた。

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