小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「本当に・・・・私が決めて・・いいの?」

「いいよ。茉祐が思ってること、言ってみて」

俺が決めたとしても、彼女はそれを受け入れてくれると思う。
でもどこかで、俺に『従った』のだという感覚を持ってほしくなかったから。

「祐一郎は・・」

「うん」

「私の・・何を守りたいの?」

まっすぐな彼女の眼差しに、ちょっとした意図を感じた。
この『何を』が、彼女にとっては重要なんだろう。

「茉祐の・・笑顔だよ」

「・・笑顔?」

「そ。俺は茉祐に、楽しいな幸せだな・・って笑っていてほしい。そのために、俺ができることがあればしてあげたい。それだけ」

「・・それだけ・・って。私ばかり助けてもらって、祐一郎には何のメリットも無いじゃない・・」

それを聞いて、今度は俺がプッと吹き出す。
彼女は、分かっていないのだ。
ただそばにいるだけで、価値があることに。

「なにそれメリットって。じゃあ茉祐は、メリットがあるから俺と一緒にいるの?」

「ちがっ、そんなんじゃない!」

「じゃあ・・・・どうして?」

「それは・・・・。祐一郎のそばにいるだけで、すごくホッとするから・・」

なんだ・・。
彼女も同じじゃないか。

「ふたりとも、ただ一緒にいるだけで幸せみたいだよ・・茉祐」

「うん・・」

「じゃあ・・答えは出たよね? コーヒー買って、車に戻ろうか」

俺たちは椅子から立ち上がり、レジで4人分のコーヒーをオーダーした。

ふたりをだいぶ待たせてしまったな。
後で怒られるのは、覚悟しておくか・・。

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