小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
車に戻ると、オジサンふたりは仲良く眠っていた。
彼女用に車に置いた、ふかふかのピンクのブランケットを掛けて。

俺は、買ってきたコーヒーを飲みながら彼女に伝えた。

「茉祐・・」

「ん?」

「神崎先生には先に返事するけど、プロポーズはちゃんとした形でするから・・待ってて」

「・・・・えっ」

目を見開いた彼女の頭をポンポンと撫でながら、飲みかけのカップを彼女に渡して車のエンジンをかけた。

「帰ろう。俺たちの家に」

「・・うん」

高浜教授を自宅まで送り届け、神崎先生の泊まっているホテル近くに車を停めた。
さっきの、返事をするために。

「神崎先生、少し・・いいですか」

「もちろん。茉祐子は・・少し待っててくれるかな。男同士の話がしたいんだ」

「・・はい」

心配そうな彼女に『大丈夫だよ』と伝えて、俺は車を降りた。
ホテルまでの道を、神崎先生とふたりで歩く。

「神崎先生」

立ち止まって呼び掛けると、先生が振り向いた。
俺は、先生の目を見て気持ちを口にする。

「茉祐子さんとの結婚を考えています。一生、大事にすると約束します。私に・・任せていただけますか」

俺は頭を下げた。
すると、肩に神崎先生の手が置かれ、持ち上げられる。

「嬉しいよ。私は、加奈子にも茉祐子にも何もしてやれなかった男だ。そんな私なのに、こうして頭を下げてくれるなんて。
お願いしたいのは私の方だ。娘を・・茉祐子をよろしく頼みます」

神崎先生は、俺の両手をぎゅっと握った。

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