小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「これ・・なんだけど」

彼女に手渡されたページにあったのは、ウエディングバンドと呼ばれる結婚指輪の方だった。

「えっ、これ?」

シンプルな結婚指輪に比べれば、デザイン性のあるプラチナ台にぐるりとダイヤが配置されたものだから、結婚指輪にしては高額な部類に入る。

「茉祐、これ結婚指輪じゃない? そっちはまた別で・・」

「ううん。私、指輪ならこれがいいの。婚約指輪とか結婚指輪とか関係なく・・雑誌で初めて見た時に一目惚れして、ずっと憧れてた」

「そっか。じゃあ、後で見に行ってみる? 予約・・いるよな」

彼女の指に収まったところが見てみたくて、俺はウェブページに記載されている番号に電話した。
たまたまキャンセルが出たばかりで、その時間帯なら予約が取れると言われて即応した。

電話を切って時計を見ると、あと1時間ほどしかない。

「茉祐、すぐ支度して出よう。キャンセルが出て、12時からなら入れるって」

「本当? うん、すぐ準備するね」

彼女が用意している間に、俺は念のため、保持しているクレジットカードの限度額を確認した。

このところ、あまり使ってないし・・・・大丈夫そうだ。


予約時間に遅れないよう、俺たちは電車で行くことにした。

立派な入口と黒服のスタッフに最初は圧倒されたものの、通された相談ブースで話を聞いているうちに、少し落ち着いてきた。

「寺嶋様がお話されているリングは、こちらになりますね。どうぞ、お手に取ってご覧ください」

キラキラした目で憧れの指輪を手にしている彼女を見て、なんだか俺まで幸せな気持ちになった。

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