小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「祐一郎、ちょっとちょっと」

出勤早々、小児科のナースステーションに現れた大翔は、俺の腕を引っ張って廊下に連れ出す。

「なんだよ、朝から騒々しいな」

「そう言うなって。俺さ、茉祐子の親父に会ったんだよ! で、調べてみたらすごい外科医だった!」

そういえば、彼女の部屋の前で大翔と『あの男』が口論してたんだった。
一昨日のことなのに、もう何日も前のことのように思える。

「心臓外科、だろ? 神崎先生。大翔、神崎先生とモメてたくせに随分印象変わってないか?」

「えっ、どうしてそれを・・・・」

「それもそうだけど、大翔に聞いた彼女の噂話、結構違ってたぞ。いったい誰に吹き込まれたんだよ。特にほら『かなり飲んで酔った時に、一度だけ・・』ってやつ」

「あ・・・・。あーーー、ごめん。でもさ、茉祐子もちゃんと言わないからだよ。事の真相って何だった?」

「今度彼女に会った時に直接聞けよ。自分の勘違いに、恥ずかしくて落ち込むぞ~。じゃ、申し送り始まるから行くわ」

ナースステーションに戻ろうと振り返ったところで、後ろから大翔の声が追いかけてくる。

「やっぱり俺の読みは正解だった。祐一郎なら、茉祐子を受け入れてやれるんじゃないか・・って言ったろ? 紹介料は安くしとくからなー」

俺は大翔を振り返らずに、右手を上げてヒラヒラさせた。
まぁでも・・大翔がいなかったら、確かに彼女と付き合うことは無かったかもしれないな。

紹介料はともかく、結婚式には来てもらおうと思った。

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