マッド★ハウス
最後の地権者/その4
アキラ



よく見ると、この家のピンポンは最新型のTVドアフォンだった

ならば、かえって好都合か…

まずはオレのこと、見てもらわなくちゃ

ヤクザもんじゃないこと、よく見て判断してくれと…

よーし!

んなら、カメラのレンズらしき箇所に角度を変えて、映ってやれ

すると…

「あなた、建田組の人じゃないのね?ホントに…」

「違います。あのライブハウスで楽器弾いてるもんです、ボク」

「はあ…」

「…なので、今日はいつもうるさくしてるんで、一度ご挨拶をと…。年明けギリギリで申し訳ないんですが…」

「そう…」

泉さんは、やはり用心深いらしく、常に一呼吸おく

でも色々試したくなってきて、ドアフォン意識して体の位置かえたしてみた

まあ、向こうからはどう映ってるかは分からないが…


・・・


で…、またしばらく間をはさんでから、声が聞こえてきた

「今、玄関開けるから、ちょっと下がっててくれる。ポーチの下まで」

オレは寿司皿持ったまま、ポーチ下まで降りた

ちょっとして、静かにドアが開いた

30センチほどドアが開いて、泉さんは顔を覗き込んでる

ジーッと

ドアチェーンはそのままで

「あなた、嘘ついてないわよね、ヤクザじゃないのよね?」

「泉さんからは。どう見えますか?」

「まあ、普通の人みたいだけど…」

オレは寿司皿を手に持ったまま、話した

「ただ、これ持って行くように言ったのはオーナーの建田さんです。ぼくは挨拶して、受取ってくれなければそのまま帰るということになってますが…」

玄関の間から、泉さんは寿司皿とオレの顔を相互に目線を二往復させてから、チェーンを外した

「…あなたがそのスジかどうかが問題なのよ、私には。両手をみせて」

オレは寿司皿を泉さんに持ってもらって、両手を広げて見せた

「指はちゃんとあるわね…」

あるって、トーゼン!


...



彼女は、更に続けた

「ちょっと、服、脱いでみて」

はー??なんで…?

一瞬、考えたがすぐ入れ墨のチェックだとわかった

「あのう、玄関前で服脱ぐのは、いくらなんでも…」

すぐにこう言い返すと、「そうね、じゃあ入って」となった

「ドア閉めても、チェーンはかけちゃダメよ」

さすが聞いてるとおりだ、このガードの硬さは

でも玄関の中に入っただけでも、すでに新記録だ

オレは上着を脱いで半袖のシャツ姿になった

「背中めくってみて」

おいおい、そこまでかよ~

オレは後ろ向いてシャツを捲し上げた

「うん、ないようね。じゃあ、前向いてみて」

オレは前も同様に見せた

ないってば、墨なんて…

「一応、下も脱いで見せて」

はー?

勘弁してくれー!

「あの、足だけじゃダメですか?さすがに、パンツ姿はちょっと…」

泉さんはまた少し、間をおいてから答えた

「じゃあ、ズボンまくるだけでいいわ」

オレは言われたままのことをした

「いいわ、確認できたから」

ふー

オレはさっさと服を着て、「お寿司どうします?それ、厳密には建田興行のお金で払ったものですけど…」

泉さん、また一呼吸だ

「あなた、ちょっと食べてみて。変なクスリ入れてないか確認よ」

いやあ、参った…

ここまでやるかって感じだよ

まあ、いくつか食べたけど、今度は様子見たいからまだ帰るなと…

しばらくしてオレに眠気でも出たら、また反撃材料にするのだろう

いやー、ハンパじゃないわ、この女性~~





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