マッド★ハウス
その6
アキラ



「…ほい、アキラの好きなマティーニ。オレのおごりだから」

「タカさん、いつもすいません…」

「ハハハ…、遠慮せんでいいけん。ああ、先月分、○万円で明細回しといたよ」

「えっ?ちょっと、多くないですか?」

「いいって。カウンター周りの修繕、手伝ってもらった分とかありよったしねえ」

「でも、間宮さん、なんか言ってませんでしたか?」

「ああ、言っとった。だからこっちも言ってやった。そっちはいつも”原価”叩いとるんで、これでチャラやろって。間宮君、苦虫噛んどるような顔しとったな。はは…」

「タカさん‥」

マッドハウスのバーカウンター…、腕利きのシェーカーである薗原貴之さんは、ココでは唯一の味方で、オレにはホント、親切にしてくれてるんだ

100万円の借金を負わされ、この店に”囲われ”て2か月…

この人がいるおかげで、どんなに救われたことか…

...


今日は間宮さんに用意された”メニュー”を済ませた後、ロード・ローラーズのライブを観て、今お客さんが引き上げたんで…

カウンターに座って、タカさんとは向き合って談笑しているところだ

「…アキラもさ、ここでのローラーズの演奏、随分と楽しそうに聴いとるね。結構、ロック好きになってきたんじゃない?」

「ええ。いいですね…。マッドハウスの専属ってところが、何でか、訴えかけられるものとか感じて…」

「はは…、アキラ、粋なこと言いよるね。オレにはわかるよ。…あのライブ感はさ、他のアマチュアでは出せない”何か”があるんよ。それはさ、例えプロでも無理やろうね。技術面とは別やろうから、それって…」

「タカさん…、じゃあそれは、何なんですかね?」

オレはタカさんへストレートに尋ねた

何故か、無性にその答えが知りたかったんだ





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