中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
婚約から、逃げていいですか
朝日が降り注ぐ窓、眠れない夜を過ごした私は、カーテンをほんの少し開いて、外を覗く。
昨日たくさん詰めかけていた人たちは、諦めたのか門の前にはいなかった。
「……それにしても、ここはどこなのかしら」
三階建ての建物を王都に所有できる貴族なんて、数えるほどしかいない。
だから、その答えは、ディストリア侯爵家の所有する建物なのだろう。
「…………レナルド様」
王族の呼び出しに、早朝から出かけて行ったレナルド様。入れ替わりに、今は、ミルさんが護衛に来てくれている。
レナルド様は、出かける直前まで、「表に出ないように」と、私に繰り返し言った。
確かに、昨日の襲撃といい、安全のためには、一箇所にいて欲しいのは、分かるけれど。
「それにしても、聖女様を閉じ込めるなんて。名前を呼ぶことも出来ずに、守護騎士としての責任感で思いに蓋をし続けてきたせいね。……拗れているわ」
「こじれ?」
「あら、ごめんなさい。こちらの話」
ミルさんは、今日は露出度控えめだ。
首元まで黒いレースに覆われたタイトなドレス姿は、逆にその妖艶さを際立たせている。
実は、ミルさんが来るまで、少しだけ時間があったから、お屋敷を抜け出そうとした私。
結果、お屋敷はおろか、この部屋から出ることすら叶わなかった。
どれだけ厳重な防衛体制を敷いているのだろう。心配性なレナルド様らしい。
それでも、聖女の称号と魔法を持っていた時には、たぶんここから出るなんて、簡単だったに違いない。
自分の身を守ることも出来ない。聖女の力のない私は、懐かしい、かつての世界と変わらない。