中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
二度目のキス
ミルさん改め、ミル様は、別の馬車で来ているから、と言ってさっさと先に行ってしまった。
なぜか、シストのことも抱っこしたまま、レナルド様と私は、二人きりになった。
「さ、手をどうぞ」
「あ、はい」
まるで物語の一幕みたいだ。
白い正装を纏った騎士様が、馬車に乗るためにエスコートしてくれるなんて。
レナルド様のエスコートは、巧みで、気がつけば、まるで月面にいるみたいに、フワリと馬車に乗り込んでいた。
でも、まだ説明すら受けていない私は、戸惑いが隠せない。これからどこに行くのだろう。
馬車に乗り込むと、斜め向かいにレナルド様が座った。優雅に組まれた長い足は、広い馬車なのに、少し窮屈そうだ。
「レナルド様……。これからどこに行くんですか?」
「……ピラー伯爵家に。リサは、ピラー伯爵の養女になって下さい」
「え? 何を言っているんですか」
ミルさんの、義妹になるってこと?
楽しそうだけれど、どうして?
「……そして、俺と婚約してくれませんか? ピラー伯爵家は、歴史が長く、名家だから、ディストリア侯爵家に嫁ぐのに都合がいい」
私とレナルド様が、婚約という話は、まだ続いていたらしい。そんな話、全く出てこなかったから、立ち消えたのかと思っていたのに。
どうして、私なんかと、レナルド様は婚約したいのだろうか。
「婚約については、もしリサが嫌なら、後で破棄してくれて構わないですから」
「…………レナルド様にとって、その方が都合が良いのですか?」
「は、俺は。…………リサのことが、好きで。婚約は、俺の一方的な願いだから。選ぶ権利は、リサに」
侯爵家のお方で、騎士団でも最高峰の強さを持つレナルド様。どうして私の方が、選ぶ立場になんてなれるだろう。