中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
『魔術師ミル……。僕の邪魔するの?』
「レナルドに、あなたを信用するなって、言われているの」
『はは、レナルドに? 今までいた、数多の騎士の中で、一番僕と似たもの同士なクセに』
レナルド様と、シストが似ている?
いつも、軽い調子のシスト、どちらかというと寡黙なレナルド様。二人は対極だ。
『何か言いたそうだけど、そう言うのじゃないから』
「じゃあ、何が」
『愛する者を守るためには、手段を選ばないところ』
手段を選ばないという件に、妙に納得した。
『さて、理沙は何を選ぶ? 僕は、ただ、君たちの選択を尊重するだけだ』
「聖女とか、聖女じゃないとか、それほど興味がないの。ただ、もの凄く後悔している」
『へぇ。なに?』
「まだ、レナルド様に、好きと言ってない。それに、私はレナルド様の隣で戦いたいの」
時間は、たくさんあった。
気がつくことも、いくらでもできた。
ただ、色々な理由をつけては、気がつかないふりをしていただけ。
『そう』
するりと、なめらかでフワフワな体が、擦り寄せられる。
『理沙は、一人で全てを守ろうとした僕の聖女とは、少し違うんだね。ああ、そうそう。ここに聖女がいることは、バレているから。魔術師たちは、王都を守らないと、大変なことになるよ。だから、ついて来たらダメだ』
いつのまにか、ビアエルさんと、ロイド様まで、この場に駆けつけている。
「あなたを信じろと?」
冷たい瞳のまま、魔力を練る、ミルさん。
静かな殺気とともに剣に手をかけた、ロイド様。
ちょ。酔っ払っているんですか、ビアエルさん。
『……理沙の選択を信じてあげるといい。それに、王族や貴族たちに、君達や善良な国民まで巻き込まれるのは、ハッピーエンドにケチがつく。ちゃんと君たちも、生き残って?』
地面に響く、無数の足音。
それは、王都にどんどん近づいてくる。
でも、魔人を倒さない限り、魔獣は無数に湧き上がるのだと、歴史は物語る。
『さ、おいでよ』
差し伸べられた前足。
その手に触れれば、今日も私の体は、バラバラの粒子になる。
次の瞬間、私だけが、荒野を見下ろす、崖の上に立っていた。