中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

これが本当の初めて


 魔獣で溢れかえる、崖下の荒野。
 こんなにたくさんの魔獣、見たこともない。
 翼竜で、空は影が差すみたいだし、地上には全ての種類の魔獣が、勢揃いしていそう。

 それでも、探している人の姿は、直ぐにわかる。
 赤いリボンで繋がれた、私たちの小指。
 私たちが、聖女と守護騎士ではなくなっても、まだ、繋がっている。

 フワリと風になびくリボン。
 本当のリボンじゃない、それは魔力の繋がり。

「レナルド様!」
『このまま、下に降りたら死ぬけど』
「シスト、聖女に戻るには、どうすればいいの?」
『……名前を捨てればいい。僕にも呼ぶことができないほど』

 理沙という名前が、聖女の力に関係することは、なんとなく分かる。でも、具体的にはどうすればいいのだろう。

『愛しい僕の聖女。彼女の名は、もう、僕も呼ぶことができない。それでも、確かに彼女は存在した。だから、名前をなくすことを、怖がることはない…………。僕の可愛い聖女様、君の力になりたいんだ。さあ、願いを言って、僕に名前を預けて』
「シスト、私はレナルド様と一緒にいたい。それに、仲間を守りたい」
『良いんじゃないかな。僕は、君のその考え方、結構好きだ』

 桃色の魔力とともに、戻っていく、ステータスの聖女の文字。

「レナルド様は、守護騎士じゃ、なくなったままなの?」
『レナルドは、聖獣であることを捨てた僕と同じだ。君はたった一つを選べないけど、レナルドは一つしか選ばない』
「……私のため?」
『愚かだと、笑えば良い』

 笑えるはずがない。
 誰かのために必死になっているのは、私もレナルド様も、シストも変わらない。
< 85 / 110 >

この作品をシェア

pagetop