中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
止まることなく戦い続けていたレナルド様が、一瞬呆けたように動きを止める。
私にとってのあたりまえが、まったく伝わっていなかったことに衝撃を受ける。
だって、大好きで、大切で、私の世界で一番重要な人なのに。
「あ、伝わっていなかったんですね」
それは、私の思い込みだ。
自分がこんなにも思っているのだから、伝わっているに違いないという、私の傲慢だ。
「――――そんな」
私がもう一度張った魔法障壁に、ぶつかった巨大な蛾の魔獣。
その魔獣を、シストが尖った爪で切り裂く。
『ちょ! こんな場面で、二人の世界作っている場合じゃないよね? 君たちなんでそんなに余裕なの⁈』
シストの言うことはもっともだ。
「あとで、話を聞かせてください。俺たちは、あまりに秘密主義だったようです」
「は、はい……」
そういうと、レナルド様は、いつもの魔獣を前にしたときの殺気をあたりに張り巡らす。
聖女の称号が、あるのとないのでは、大違いだ。
殺気を受けても何ともない自分が、どこか誇らしい。
『あと、150匹くらい倒してもらえないかな? そうしたら、なんとか』
その瞬間、周囲が、気味の悪い淡い緑の光に包まれた。
『うわぁ……。間に合わなかった』
目の前には、ヤギの頭に、鳥のかぎ爪を持った、魔人が立っている。
今度は、レナルド様は、切りかかることなく、用心深く私の前に立つ。
『――――レナルド』
「何でしょう。信用ならない聖獣様」
『ひどいな……。君が、自分のことを許せる日が来たら、僕のことも受け入れられると思うよ』
「そんな日……。来るのでしょうか」
二人の会話は、とても大事なことを話している気がする。
でも、今はそのことを問いただす余裕もない。
あの時、私とレナルド様の体を侵食した悪意を思い出して、背筋が凍るように冷え切る。