中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

『来るさ。現に今、ようやく僕も、自分のことが受け入れられそうだ』

 初代聖女が現れてから、もう千年以上経っている。
 人間の寿命では、とてもその境地に到達することは難しいだろう。

「聖女に、戻ってしまったのか……。もし、そのままでいてくれれば、殺さずに済んだだろうに」
「――――どうして、こんなことをするの」
「同じことを聞くのだな」

 ……同じこと?

 シストが、牙をすり合わせて、歯ぎしりする音がした。
 つまり、それは初代聖女と同じことを言ったということだ。

「――――何度も封印されて、それでも繰り返すのは、聖女が欲しいから。どうだ? 一緒に来ないか? そうすれば、この世界のすべてを捧げよう」
「――――断ります」
「すげない返事だな。だが、もう彼の世界から聖女が来ることはない。扉を塞いだから。そうであれば、お前を手に入れるか、殺すかしか選択がない」

 確かに、聖女はもう来ないという言葉は、前回聞いていた。
 もう、私やナオさんみたいな存在が、この世界に迷い込むことはない。

「シスト、聖女様を守れ」

 そうつぶやいた、レナルド様が、魔人の元に飛び込んでいく。
 美しい装飾が施された、氷のような刃をした剣に、そぐわない乙女チックな桃色の光がまとわりつく。

『言われるまでもないっ。ようやく、彼女との約束が果たせるんだ。絶対に、叶える!』

 スローモーションのように、魔人の胸に、剣が刺さっていく。
 けれど、魔人は、全く意に介していないように笑った。

「捕まえた」
「ぐっ?!」
< 93 / 110 >

この作品をシェア

pagetop