中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
私の張った魔法障壁が、数枚のガラスが一度に割れたような音を立てて壊される。
「レナルド様!」
その瞬間、藤色の魔力が、周囲を包み込む。
「――――まさか、中継ぎ聖女だった私が、魔女になってまで、魔人と戦うなんてね」
そこには、白銀の髪をまとめた、一人の年老いた女性が立っている。
でも、藤色の魔力を身にまとったその人を、聖女ではないと言える人なんてきっといない。
「時間を稼ぐわ。王都にお行きなさい」
「ナオさん!」
ふわりと笑った顔には、覚悟が見え隠れしている。
そんなのダメだ。そんな覚悟。
『ナオ……。せっかく、聖女の運命から、逃がしてあげたのに』
「そろそろ、あの人に会いたいなって思っていたところだから」
『そう……。じゃあ、とりあえず、僕も付き合おうかな』
「あら、共闘なんて久しぶりね?」
『君は、歴代でも、優秀だった。中継ぎだなんて、これからの世界で呼ばせはしない』
「ふふ、逃げ出した私に、温情をかけ過ぎだわ」
白い獅子は、確かにほほ笑んだように見えた。
二人の笑顔が、霞んでいく。
体が分解される感覚は、確かに不快だ。
でも、抱きしめられたせいか、二人が一つになるような感覚は、不快だけではない。
『あとでね? 僕のかわいい聖女様』
シスト! ナオさん! そう叫んだ私の声は、たぶん二人には届かなかった。