中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 私の張った魔法障壁が、数枚のガラスが一度に割れたような音を立てて壊される。

「レナルド様!」

 その瞬間、藤色の魔力が、周囲を包み込む。

「――――まさか、中継ぎ聖女だった私が、魔女になってまで、魔人と戦うなんてね」

 そこには、白銀の髪をまとめた、一人の年老いた女性が立っている。
 でも、藤色の魔力を身にまとったその人を、聖女ではないと言える人なんてきっといない。

「時間を稼ぐわ。王都にお行きなさい」
「ナオさん!」

 ふわりと笑った顔には、覚悟が見え隠れしている。
 そんなのダメだ。そんな覚悟。

『ナオ……。せっかく、聖女の運命から、逃がしてあげたのに』
「そろそろ、あの人に会いたいなって思っていたところだから」
『そう……。じゃあ、とりあえず、僕も付き合おうかな』
「あら、共闘なんて久しぶりね?」
『君は、歴代でも、優秀だった。中継ぎだなんて、これからの世界で呼ばせはしない』
「ふふ、逃げ出した私に、温情をかけ過ぎだわ」

 白い獅子は、確かにほほ笑んだように見えた。
 二人の笑顔が、霞んでいく。
 体が分解される感覚は、確かに不快だ。
 でも、抱きしめられたせいか、二人が一つになるような感覚は、不快だけではない。

『あとでね? 僕のかわいい聖女様』

 シスト! ナオさん! そう叫んだ私の声は、たぶん二人には届かなかった。
< 94 / 110 >

この作品をシェア

pagetop