君とする恋は苦くて甘い
「好きな人には好きな人がいることが発覚したの。だから、もう諦めるしか方法がないんだよ」
「ふ〜ん。それで、お前が好きな奴、誰なんだよ?」
「知ってどうするの?」
「そいつをぶん殴る。お前のこと何1つ気づかないバカは、俺が許さねぇから。同じ学校の奴か? それとも、同じバイトで働いている人か?」
「……どっちも違う」
「じゃあ、誰なんだよ? ほら、早く言ってみろよ」
と、コウに急かされてしまった。
言わないと、きっと帰してもらえない雰囲気。
真っ直ぐな瞳に見つめられては、言い逃れができない。
……言いたくないのに。
絶対に、コウの前で言いたくなかったのに。
だから、ずっとずっと密かに片想いしてたのに。
そんな葛藤をコウには見えないように握り拳を作ると、意を決して口にした。
「……コウ」
「はっ?」
「私が好きな人はコウなの!」
言った瞬間、その場の空気が凍りついた。
外にいた時よりも寒い感覚。
なのに、羞恥心でいっぱいで、顔だけが熱を帯びたように赤くなる。
コウの顔をまともに見れなくてじっと下を向く。
「……」
ねぇ、コウ。
なにか言ってよ。
こんな思いするなら、言わなきゃ良かった。
今まで築いてきた関係がバラバラに壊れてしまうのが怖くてずっと言わずにいたのに。