君とする恋は苦くて甘い
「なぁ、こっちを見ろよ」
「……」
見たくない。
見られたくない。
だって、涙を我慢してることがばれてしまう。
でも、次の瞬間。
思わず振り向いてしまった。
「俺を見てよ、冬姫」
優しい声で初めて下の名前で呼んでくれたから。
「な、名前……」
「これで分かった?」
「……分かんないよ。今まで下の名前で呼んだことなかったじゃん」
「そう、だよな。でも、ずっとお前のことそう呼びたいって思ってた。恥ずかしくて苗字ばかり呼んでごめん」
「でも、なんで?」
私の問いかけに、コウは真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめながら答えた。