この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
甘々新婚生活は予定外
* * *
「ただいま、ルシェ!」
「お帰りなさいませ。……ディル様」
「会いたかった……」
「朝にお会いしたばかりですよ?」
帰ってきたとたん、私に抱きついてきたディル様を周囲が生温く見守る。
いったい何があったのか、結婚した翌日からディル様は、ずっとこの調子だ。
まるで、学生時代の私を見ているようだ。
あの時ずっと無表情だった、いや昨日までほぼ無表情だったディル様は、どこに行ってしまわれたのだろう。
「ほら、好きだったからお土産」
「こ、これは……」
差し出されたのは、へしゃげたクマのぬいぐるみだ。
一般的には明らかに可愛くはないそれは、初めてのデートで恥ずかしすぎてショーウィンドウをじっと見ていたところ、好きだと勘違いされてしまった品だ。
見れば見るほど、可愛くないような、可愛いような。
しかも抱えるのに難儀するほど大きいそれを受け取り、私は大切に抱きしめた。
これで、このクマが好きなのだとますます勘違いされるに違いない。
「……ありがとうございます」