この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

学生時代の二人


 * * *

「ルシェ!」

 少しだけ慌てたような声がする。
 目を開けると、眼前にディル様の美しい顔があった。

「うわぁ。ディル様だ……。好きです」
「っ……。ルシェ、こんな風に寝ていたら風邪を引く」

 ゆっくり起き上がる。ここ数日の環境の変化で疲れてしまっていたのだろうか。
 くしゃくしゃになってしまった部屋着。ベッドの上で何も掛けずに眠ってしまっていたらしい。

「……ディル様? どうされたのですか? 眠れなかったのですか?」

 ベッドから立ち上がって、そっとそばによると、びくりとその体が震えた。
 細く見えるけれど、シャツ一枚のくつろいだ姿になれば、鍛えられていることがよく分かる。

「……いや、そうだな。眠れなくて、君の寝顔でも見ようかと」
「うわぁ……。よだれとか垂らしていませんでしたか」
「ふ、ふふ。もしそうだとしても、ルシェは可愛いよ」

 つまり、よだれを垂らしていた、ということなのだろう。
 私は、慌てて口元を拭った。
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