この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
意外な一面
食事を終えて、出掛けるディル様を見送る。
こんな距離で、ともに過ごしていることが、幸せすぎる夢なのではないかと一瞬緩みかけた涙腺を叱咤して微笑む。
「遅くなるけれど、待っていて? 出かけると言っていたけれど、気をつけて。ちゃんと護衛を連れて行くようにね? 攫われたりしないように、あまり寄り道しないで帰ってくるんだよ?」
「ディル様が、そんなに心配性だったなんて、知りませんでした」
「そう? 表に出さなかっただけで、いつだって俺は……」
そこまで言って、まるでごまかすみたいに少しだけ口の端を歪めたディル様が、私の額に口づけをする。
「いってくる」
「いってらっしゃいませ」
「可愛い、絶対に待っていて? 馬車にひかれたりしないよう、歩くときには気をつけ……」
「遅刻しますよ?」
「……そうだな。ギリギリだ」
足早に去って行く背中を見送る。
学生時代、ほとんど何ごとにも興味のなかったディル様が、意外にも心配性だったなんて、結婚してから、今さらになって知ることが多い。