この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
「朝見かけた、新入生、か」
珍しく示してしまった興味。
その日から、彼女を見かけるたびに、誰にも気がつかれないように目で追うようになっていた。
Cクラスに通う彼女は、裕福な伯爵家の長女で、名をルシェ・アインズという。
クラスメートの名前は、もちろん今後の社交活動のために覚えた。
けれど、ほんの少し聞こえてきた彼女の名前は、覚える気もなかったのに心に残ってしまった。
「おはようございます! 突然ですが、好きです!」
「……君は」
「ルシェ・アインズといいます!」
「……うん、知っている」
「えっ!?」
それ以上、ルシェは追いかけてこなかった。
ふと、振り返ると彼女は頬をまっ赤に染めて佇んでいた。