この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
その日から、毎朝ルシェは俺に挨拶をしてきた。
「おはようございます。好きです!」
毎日繰り返される挨拶。
それは、変わりない日常に、なりつつあったのに……。
「あれ? 今日は、なにか嫌なことがあったんですね……。大丈夫ですか?」
「は?」
そう、確かに彼女についての嫌な噂を聞いてしまった。
けれど、顔には出していなかったし、誰一人気がつくことなどなかったのに。
「はい!」
「……これは」
「疲れたり、嫌なことがあった時は、甘いものを食べるといいですよ?」
それだけ言うと、彼女は去って行く。
まるで、野原で出会った懐くようで懐かない野生のうさぎのようだ。
そんな場違いな感想を抱いて、俺はアメを口に放り込んだ。
「っ……!?」
意外にも、そのアメはものすごく酸っぱかった。
そして、その一週間後、学業で上位の成績になり、しかも貴重な光魔法を持つルシェは、Aクラスに編入してきたのだった。