この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
その時、金色の光が脳裏に浮かぶ。
その中心にいるのは、私だ。
顔を覆って、冷たい雨の中で、何もかも悲観したあの日の私。
「…………あれ、どうしてだろう」
そう、忘れていた。
ディル様の最後を知ったとき、私は……。
「あの時、光魔法を使えた?」
ディル様を助けたくて、ありったけの光魔法を使った。
結果、もちろん死んだ人を生き返らせることなんて出来なかったのだけれど……。
そして、その後私は、なぜか呪われてしまったのだ。
不思議なことに、今なら光魔法を絶対に使える、という確信があった。
けれど、傷ついたディル様を前にひどく混乱していた私は、魔法の出力をコントロールすることが出来なかった。
「……死なないで! 全部あげるから! ……ディル様!」
「ルシェ!!」
ディル様の声が出るようになって、ホッとしても、どうしても魔力の流出を止めることができなかった。
魔力が完全になくなって、冷えてしまった体。
あの日、私の元に戻っては来なかったはずの人が、涙でぐしゃぐしゃのひどい顔のまま私を抱き上げる。
そのことに、安心して、悲しくて、嬉しくて、悔しくて、ごちゃ混ぜの気持ちのまま、せめて泣かないで欲しいと微笑みかける。
「……もう、私より先に、いなくならないで」
「ルシェ……。君は」
私が覚えている、その日の記憶は、そこまでだった。