この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
私のことをまっすぐに見つめたディル様の瞳が、なぜか結婚を申し込んでくれたあの日の瞳と重なる。
開き掛けた唇が、まもなく私が予想している言葉を紡ぐのだろう。
「俺の命は、あと半年、もたないだろう……」
今日もディル様の心臓にまとわりつくような黒い蔦が見える。
その事実をあの日知っていたなら、何か変わっただろうか。
そして、続く言葉が遠慮がちに告げられる。
「でも、そのことをルシェは、すでに知っているんだな……。それは、なぜ?」
人生をやり直しているんです。
唇だけがハクハクと動く。
伝えようとしたその言葉は、なにかの制約に阻まれてしまったかのように、口にすることが出来なかった。
「……言えない、のか」
「言えない……みたいです」
「そうか。……ある程度予想がついた」
これ以上話す必要はないとでも言うように、塞がれた口づけは、なぜかとても苦いように思えた。