この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
消えない雨音
* * *
貴重な時間だというのに、私は三日も意識を取り戻さなかったらしい。
それからというもの、ディル様の過保護には磨きがかかってしまった。
「ふらついている。支えるよ。それとも抱き上げようか?」
「はわ! お、お手洗い……ですので」
「倒れたら大変だ。何かあったら必ず呼んで」
「わ、分かりましたから!」
サーベラス侯爵家は、もともと資源豊かだ。
相次いだ天災と、後継者が変わった関係で、一時的に困窮しただけで。
「あの、今度の夜会のドレスは、もともと持っている青いドレスを着ようかと」
「どうして?」
「だって、サーベラス領が大変なときに、高い買い物なんて……」
「――――ごめん」
「え?」
マシュマロの入ったココアを用意し、今度の夜会について切り出した私から、ディル様は分かりやすく顔を背けた。
しばらくの沈黙の後、少し緊張した様子で、ディル様が口を開く。
「もう、ほとんどサーベラス領は持ち直していると言ったら、怒る?」
「え……。本気ですか」
「――――天災は続いたけれど、おかげさまでもうほとんど解決した」
「えぇ……!?」