この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
衝撃の事実。
異常に忙しいと思っていたけれど、まさかもうサーベラス領の問題が解決してしまうなんて。
「な、なんで言ってくれなかったんですか」
「うん、君が結婚をやめると言い出さないかと心配で」
「そ、そんなはずないでしょう!?」
「……ごめんね?」
そう言って、眉を寄せて微笑まれてしまえば、それ以上私が言えることなんて一つもない。
だって、好きなのだ。大好きすぎて、全てを許してしまいそうになるのに、そんな言い訳されて怒れるはずがない。
「好きです」
「うん、俺もだよ?」
「大好きです」
「うん。……愛している」
ディル様と一緒にいる時間は幸せだ。
けれど、時間が経てば経つほど、ディル様の心臓は呪いに蝕まれていく。
「幸せだ……。満足している」
「だ、ダメですよ! 私より先に死ぬのだけは!」
「……それは、それだけは、許して欲しいな」
「……え?」
「俺より先にいなくならないで。他にもう、我が儘なんて言わないから」
降り止まない雨の音が聞こえる。
実際には今日は晴天のはずなのに、その音はディル様を前にして止むことがない。
「せめて、最後までそばにいさせてくれますか?」
「……それで、ルシェがいいのなら」
「離れて、行きませんか?」
「望んでくれるなら、離れたいはずなんて、ない」