この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

 雨の音が激しくなる。
 それが本音だというのなら、私はあの時あなたのことを一人にしてしまった。
 苦しんでいることにも気がつかずに、たった一人で……。

「ああ、でも、ルシェの理想の俺のままでいたいから、最後は見ないで欲しいかな」

 今日の口づけは、塩辛い。
 でも、私はまだ、諦めたりしない。
 今したばかりの約束は、守れないかもしれないけれど、どうしても生きていて欲しい。
 それは、私の自己中心的な我が儘なのかもしれないけれど。

「愛しています」
「うん……。それに、まだ諦めたわけじゃない。だから、俺のことで心配なんてしないで」
「それは、無理な相談です」
「そう……。ごめん、嬉しい」

 抱きしめられた腕の中は温かくて、ずっとまどろんでいたくなる。
 雨音は、消えてくれないけれど。
< 45 / 62 >

この作品をシェア

pagetop