この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
お互いしか見えない
* * *
私は、ディル様の介護にも近い甲斐甲斐しさにより元気を取り戻していた。
過保護なのは、まったく変わりがないけれど……。
私たちが結婚して一か月。届いたのは、ディル様の瞳の色と同じ、コバルトブルーのドレスだ。
お揃いに仕立てられた正装。
少し恥ずかしいけれど、久しぶりに気分が浮き立つのを感じる。
「綺麗だ……」
「それは、ディル様のほうです。それにしても、お高かったのでは?」
「サーベラス領は、持ち直した。身を粉にして働いたからね」
(いくら資金があったとしても、前回より格段に早い回復。私は、ディル様が呪いより前に倒れないか心配で仕方なかったです)
銀の髪に、瞳の色を取り入れたマントを羽織ったディル様は、あまりに美しい。
もしかして、絵本の中に飛び込んでしまったのではないかと錯覚してしまう。
「素敵です、カッコいいし、綺麗だし、うう……。自分の語彙力のなさを呪います」
「はは……。可愛い」
そっと、頭頂部に落ちてきた口づけと、ずしりとした重み。
振り返った壁付けの鏡には、キラキラ輝くティアラをした私が映っていた。