この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
私のことを抱きしめたまま、見下ろしてくるディル様。
あまりに美しい顔が、近すぎるからクラクラめまいがしてしまう。
「いつもみたいに、好きって言って欲しいな」
「あ、あの」
「…………言って?」
「す、好き! 好きです!!」
好きなことに間違いはない。
ただ、手が届かないと思っていた時間が長かったから、いざこんなに近くにいられるとなると、どうしていいか分からないだけで……。
「よくできました」
合わさる唇。
離れるときの、少し切ない吐息。
ずっと、こうしていられたらいいのに。
そっと、背中に手を伸ばすふりをして、なんとか呪いの蔦を引っ張れないか試す。
もちろん、触れることは出来ない。
「――――残念だな」
「え?」
「到着だ」
気がつけば、すでに王城の正門をくぐっていた。
きらびやかに飾り付けられた王宮。この場所に来るのは、本当に久しぶりだ。