この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
やはり、聖女ローザリア様は、暗い瞳を私に向けて去って行く。
学生時代にフワフワと微笑んでいた彼女と別人のようだ。
「――――妻をかばっていただきありがとうございました」
「……陛下に呼び出されることくらいは、想定して人をつけておくべきでした」
「申し訳ありません」
「――――大切な妹を任せているのです。しっかりしていただきたいものですね」
(お、お兄様。どうしてそんなに挑戦的なのですか!?)
お兄様は、厳しい視線をディル様に向けた後、私の方を向いて微笑んだ。
そう、私が呪われてしまったことで死を迎えた時に、一番そばにいてくれた人だ。
一度だけ見た、お兄様の泣き顔。それは、私がベッドから起き上がれなくなったときだった。
「ありがとうございます。お兄様」
「何かあったら、いつでも頼るように」
「はい……」
お兄様は、いつでも完璧で、ディル様に負けずいつでも貴族の微笑みを貼り付けている人だった
あんな風に、私のために泣くなんて、思ってもいなかった。
だから、今までと違う目線でお兄様を見ている自分がいる。
「頼りにしています。お兄様」
「そ、そうか」
そう言ったお兄様の笑顔は、いつもと違って華やいで見えたのだった。