この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
踏み出した一歩。ほんの少しの緊張。
けれど、ディル様のリードはどこまでも洗練されていて、とても踊りやすい。
「ダンス、上手なのですね……」
「子どもの頃から、嫌になるほど練習させられたからな。だが、ルシェもとても上手い」
「ありがとうございます」
ディル様といつか踊ることを夢見て、猛特訓していただなんて、とても言えない。
ふさわしい淑女になりたかったから、勉強の合間にも色々と頑張ったのだ。
「夢みたい」
「さっきから、そればかりだな」
少しだけ意地悪を言いながらも、私を見下ろすディル様の瞳はとても優しい。