この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
にっこり笑ったディル様と、少し戸惑った私は、その後あっという間に貴族たちに周囲を囲まれる。
「愛する妻です」
そんな恥ずかしいことを堂々と宣言してまわるディル様は、ある意味すごいと思う。
私は、その隣でニコニコと微笑んでいるのがやっとだった。
(ディル様のお力になれるように、もっと社交性を磨かなくては)
「――――ルシェ!」
その時、赤い髪が印象的な女性が人波をかき分けて私のそばに来た。
「ディル様もお久しぶりです! ようやく正直にルシェが好きだって言えるようになったようで安心しました」
「メリア!!」
彼女は、バロリオ伯爵家の三女で、学生時代の友人だ。
Cクラスだった私と一学期は常に一緒にいた。
私が必死になってAクラスになってからも、ディル様を追っかけては、ディル様のことばかり語る私を優しく応援してくれていた。
「ルシェが、ディル様を射止める日が見られて、二人の恋路を見守ってきた身としては、感無量だわ」
「な、何言って……。恋路だなんて、私が一方的に」
「え? そうかな……。ずっと、ルシェに熱い視線を送っていたのは、むしろディル様のほうだと思うけど。ね、そうですよね? ディル様」
「そうだな。入学当初からずっと見ていた……」
「え?」
その時、ふと振り返ったミリアは、彼女の名前を呼んでいた優しそうな人に、朗らかな笑みを向けた。