この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
手掛かりと焦げた香り
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「しばらく、戻ってこられない」
「え!?」
どんなに真夜中であろうと、必ず家に帰ってきていたディル様から、その言葉は、その日突然告げられた。
「やらなければいけない執務がある」
「そ、そうなんですね」
この状況での外出は危険だからと、一人の時には図書室にこもってばかりいる。
このままでは、今日も心臓のあたりでうごめきながら、明らかに育ちつつある黒い蔦を解決するどころか、私に移すことすら出来ないのではないかと、焦りばかりが募っていく。
「――――私」
「そんな顔して、そんなにさみしいの?」
私を見下ろすディル様は、余裕の表情だ。
夜会に参加したり、ディル様と一緒に最低限の社交をこなしているうちに、二ヶ月が経ってしまった。
あと、四ヶ月しかない……。