この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~
「ルエダ卿……!」
振り向いたルエダ卿は、一冊の本を手にしていた。
「……それ」
「ああ、見られてしまいましたか……。我が主が、ここに隠していたようですね」
「神殿で見つけた本……」
火事のせいで持ち出せなかったと思っていた本は、なぜかルエダ卿の手の中にあった。
「主は隠したかったようですが……。俺も、忠誠を捧げた身としては、なんとかして守りたいのです」
「……それ、私にも見せて貰えませんか」
「俺に主を裏切れと?」
「そ、それは……。でも、私、どんな方法を使ってもディル様を助けたいんです!!」
しばらくの間、私たちはまっすぐ見つめ合っていた。
でも、命をかけたって、何をしたってディル様を守りたい。それしか考えられなかった。
「……主に殺されてしまいそうですが、負けました」
「えっ! それでは!!」
「主の不在は三日間だけと伺っています。その間だけですよ?」
「もちろんです!!」
ルエダ卿から受け取ったその本は、ほんの少し焦げ臭い匂いがする。
そんなことを気にする余裕もないまま、ようやく手に入れた手がかりを私は抱きしめたのだった。