先生の隣にいたかった

体育祭当日。


私は誰よりも早く来て、
教室で一人、席に座っていた。



そして、また想像していた。


体育祭の音を。


みんなの歓声、

励まし合う声、

喜んでいる声。


こうやって今日一日に、
沢山の音が生まれる。



「おはよう」


そう言って、
教室に入ってきたのは翔太だった。



「おはよう」



「何してたの?」



「…言ってもわからないと思うよ?」





「それでもいいよ、教えて」


そう言って、翔太が私の隣の席に座った。



その瞬間、先生のことを思い出す。



私が入学してすぐの時、
先生もこうやって私の隣に座った。



「…今日体育祭だから、
その時に聞く音を想像してたんだ」



「音を想像?」




先生と同じことを聞く翔太。
だから私は、先生に言った時と同じように説明した。




「…いいね」



「分かる?」



「うん」



そうやって、微笑む翔太は初めて見た。


新しい翔太を見れたみたいで、嬉しかった。




先生の時もそうだった。





その後も、翔太と笑い合いながら、
この瞬間を楽しんだ。



この時、先生が私たちを見ていたなんて、
知らないで。


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