先生の隣にいたかった

〜もっと頼ってもいいんだよ?〜


私があの日、熱を出してから三日。



熱が下がることはなかった。
身体のだるさはずっと残っていて、この三日、ずっと寝込んでいた。


何回か電話がなったけど、出られなかった。


流石にこの三日間、まともに食事が取れていなく、心配していた寮長と、今日は病院に行くことになっていた。



「七瀬さん、もう時間だから、
そろそろ準備してね」


「…はい」


服を着替えて、
携帯をポケットに突っ込んで部屋から出た。





三日ぶりに外に出た。




バイブ音が鳴り、ふと携帯に視線を送った。



(いお、大丈夫?)



翔太からメッセージが来ていた。
通話履歴を見ると、一昨日と昨日、翔太から電話が来ていた。





もちろん、先生からも来ていた。




(ごめんね、電話出れなくて。まだ熱が下がってなくて、今から病院行ってくるね)




これだけ送って携帯を閉じる。




「七瀬さん、車乗って」




「はい」





寮長はそのまま車を走らせ、先生と三日前に来た病院に来た。主治医は、同じ先生だった。

「…ちょっと検査入院して、詳しく調べたほうがいいかもね」



入院…。



主治医から入院して下さいと言われれば、
誰だって不安になる。



「七瀬さんが、今どうして熱が下がらないのかを詳しく調べたいんだ。

少し、入院して検査してくれないかな?」


「…はい」


「ありがとう」



一度寮に戻り、入院する準備をしていた。
携帯を確認すると、
翔太からメッセージが来ていた。


(早く元気になれよ)


(ちょっと長くなりそう。私入院する事になったんだ。日向にも伝えといて)

送るとすぐに既読がついた。  



(大丈夫なの?)



(検査入院だから大丈夫だよ)




すると突然、着信音が鳴った。



そこに表示されていたのは、









先生だった。



「…もしもし」



「もしもし、いお?

…体調どう?」



先生、私分からないよ。



ずっと熱が下がらなくて、身体がだるいはずなのに、先生の声を聞くだけで、スッと何かが抜けて、楽になる気がするんだ。


怖い。



自分の身体に何が起きているのか、


自分で分からない事が



…とても怖い。





先生の声を聞くと、
今の気持ちを全部言いたくなった。







今の私が抱えている不安を全部。





「…いお?」



私は、気づけばまた涙を流していた。



「…今、寮?」



「…はい」







「すぐ行くから待ってて」



きっと先生は、
私が泣いている事に気づいてる。




でも、私もう行かなきゃ。




「先生、私入院する事になったんです」


「え…」



ごめんね、先生。
その気持ちだけで十分だよ。



「もう…行かないと」




「待って」




「先生。


…ありがとうございます。

なんか先生と電話したら、元気出ました」




私は、平気でそんな嘘をつく。



こうやってずっと先生と話していたい。


直接会えなくても、
ずっと先生の声を聞いていたい。

なのに、できなかった。そんな、私のわがままを言えるわけがなかった。


「…失礼します」


私がそう言うと、
先生は電話越しに何か言っていた。



でも、私はそれを無視して通話を切った。



そして、そのまま携帯の電源を切った。

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