先生の隣にいたかった
「話って?」
放課後、教室に残っていたのは、
私と翔太だけだった。
「…私が熱を出して、
翔太が先生の車に乗せた後、
先生と何話したの?」
私がそう聞いた瞬間、翔太は苦笑した。
「…内容は話せない。
でも…いおのせいとかじゃないから」
翔太も苦しんでる。
先生と同じで、自分の中に溜め込んでいる。
でも、先生にも翔太にも私には言えない。
そう言われてしまえば、私はもう、何も聞くことができない。
「…ごめんね」
こうやって謝ることしかできない。
何度私のせいじゃないって
言われたとしても。
「…いおのせいじゃないって言っておいて、謝らせてどうすんだよって感じだよな」
違うよ。
翔太も先生も優しいから。
だから、私のせいって分かってても、
言えないんだよね。
そうさせたのは、全部私なんだよね。
「…私は、
友達として翔太のこと大好きだよ。
だから、
もう一人で苦しんでほしくない。
私…どんなことでも受け止めるよ。
…苦しくても受け入れる。
もう、逃げたくないんだ」
翔太が抱えているのは、
どんなことなのか分からない。
でも、私にとって辛い事だと思う。
だから、翔太は私に言えないんだと思う。
「私は…翔太が私のことで苦しむ方が、
よっぽど辛いよ」
「…言うつもり、なかったんだけどな」
そう言うと翔太は、今まで溜め込んでいた何かが切れたように、涙が溢れ出した。
「…いおの好きな人…
…柴咲先生でしょ?」
「!?…ち、違う」
「もう分かってるからいいよ」
翔太は涙を流しながら、優しく微笑んだ。
「…初めは応援するって決めたから、いおは先生のことが好きって分かった時も、応援しようと思った。
それに…先生も、いおには周りとは少し違う扱い方だったから
…先生はいおに、
特別な感情を抱いてるって思った。
だから、俺はあの時
…余計なこと言ったんだ」