先生の隣にいたかった
「…頑張って」
私がそう言うと、
伊月君の目つきが一気に変わった。
そして、何回かボールをついてから、
伊月君は目を瞑り、大きく息をはいた。
そして、伊月君は少ししてから目を開けた。
「…いくよ」
伊月君がそう言った瞬間、
ゴールに向かってボールを投げた。
そして、私はその瞬間、目を瞑った。
「いおちゃん」
名前を呼ばれて、そっと目を開ける。
「…どうだった?」
伊月君が投げてから、伊月君が私の名前を呼ぶまで、ボールが床に落ちる音しかしなかった。
「…ダメだった」
そう言って微笑む。
でも、私には無理して笑っているように…
作り笑顔にしか見えなかった。
「どうして…無理して笑うの?」
「…何があっても笑っていれば、
いいことがあるかもしれないじゃん?
…それに無理して笑ってないよ。
さっきの話は、聞かなかったことにして」
「…でも」
「いおちゃん…
俺、諦めたわけじゃないよ。
なんなら、前よりもっと好きになってるよ。
…誰にも渡したくないぐらい。
…君が思っている以上に
俺は好きだよ。
…いおちゃんのこと」
こんなにも真っ直ぐに、想いを伝えてくれる人なんて、いないと思っていた。
翔太の時もそうだった。
二人とも、こんな私を好きになって、
ちゃんと想いを伝えてくれる。
「…好きだから、こんなやり方はやめるね?
…ごめんね、困らせて」
伊月君はそれだけ言って、
体育館を出て行った。
私は結局、
今の気持ちを伝えることはできなかった。