先生の隣にいたかった




「お母さん、ただいま」




「おかえり」




冬休みに入り、すぐに私は家に帰った。




「クリスマス、誰かと遊ぶの?」



「…予定ない」




もうすぐクリスマス。





先生は誰と過ごすのだろうか。





前に言っていた、大切な人だろうか。



家に帰っても結局、
先生のことを考えてしまっていた。





その時、携帯に一件の通知が入った。




(いおちゃん、クリスマス予定ある?)



(ないよ)



(家の近くで、
大好きな人との思い出の場所ある?)






思い出の場所。






入学式の前に、先生と行った観光地。





初めて先生の車に乗って、
特に何もなかったけど、
私には忘れられない思い出だった。









大好きな人との、







一番最初の思い出だった。




(あるよ)


(なら、クリスマスの日、そこに行って)


(…どうして?)


(大好きな人と過ごしたいんでしょ?
だったらそこに行って)




伊月君の言っている意味がわからなかった。



私は先生と過ごしたいとは言ったけど、
思い出の場所に行って、会えるわけでもない。



それに、伊月君には、
私は先生が好きだと言うことを言っていない。


もし知っていたとしても、伊月君が私と先生を会わせるメリットなんてない。




(いいから行ってね?行ったらわかるから)



(…分かった)



今、伊月君が何を考えているかなんて、
全くわからなかった。



でも、伊月君なりに、私を元気づけようとしてくれている事はわかった。



その気持ちだけで、十分だった。


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